水車小屋のネネ 津村 記久子
2024年本屋大賞第2位になった話題の本。
毎日新聞夕刊で話題となった連載小説が書籍化されました。
本の表紙のイラストが優し気で、ちょっと分厚いけど読んでみたいと思った一冊です。
ストーリー
高校卒業後に大学進学予定だった18歳の理佐は、母が入学金を愛人の事業費に勝手に用立てした事をきっかけに、8歳の妹の律と共に実家を捨てて二人の生活を始める。
「鳥の世話じゃっかん」と付記された蕎麦屋の仕事に住み込みで働くことになった毎日の中で、2人の姉妹を温かく見守ってくれる町の人たちと、水車小屋で出会ったしゃべる鳥ヨウムの〈ネネ〉との交流を40年という長い年月で描かれていく。
スタートしたばかりの二人の生活は、扇風機や冷蔵庫さえない貧しいものでしたが、お蕎麦屋さん夫婦と、絵描きの杉子さんや、律の担任の藤沢先生など2人の周りには、一癖あれど「良い大人」が沢山登場します。
40年の月日が流れる中で、姉妹は支えられる方から支える方へと成長していく厳しくも温かな世界観にどっぷりと浸かることのできる物語です。
そして何より、水車小屋で挽く蕎麦粉の状況を監視する賢い鳥のヨウムの〈ネネ〉に会ってみたい!
掛け合いのように、受験勉強にも付き合ってくれるんですよ ^ ^
そして、ヨウムの平均寿命が50年ということにびっくり。
ヨウムはとても知能が高く社会的な動物で、仲間や飼い主との交流を大切にします。
飼うときはスキンシップやコミュニケーションを大切にしてあげる必要があるそうです。
人間の言葉を沢山真似する賢いネネの愛しさは、是非物語の中でお楽しみください。
「誰かに親切にしなきゃ、人生は長く退屈なものですよ」
「自分が元から持っているものはたぶん何もなくて、そうやって出会った人が分けてくれたいい部分で自分はたぶん生きてる」
作品の中には、傷つきながらも前を向く人々の素敵な言葉が散りばめられています。
誰でも心が疲れちゃう時はありますよね。
そんな時に読んで欲しい。
気が合わない人だっているし、みんな同じ考え方である必要はない。ただ相手を思いそっと寄り添う気持ちが何よりも大切なんだと改めて思える小説です。ちょっと長いけど。。