日比野豆腐店 小野寺史宜
ストーリー
東京のまちなかにひっそりと佇む「日比野豆腐店」。
祖父の代から続くこの豆腐店は、店主の清道を突然亡くしたことで、祖母の初、母の咲子が中心となって厳しいながらもなんとか切り盛りしている。
しかし、こだわりの美味しい豆腐はどうしても価格が高くなってしまう。
昔からの常連さんが来てくれたり、ネット通販を始めたり、新たな販路開拓を頑張っても、スーパーのお手頃でちゃんと美味しい豆腐と戦うのは中々大変なのである。
そんな祖母・母の姿と、父の遺した最後の言葉に心を動かされる高校生の息子の令哉。
そして、家族の大事な一員、猫の福。
「日々の豆腐店」という願いも込められた豆腐店を家族で守っていく温かい物語。
物語は、祖母の初・母の咲子・近所に住むお豆腐大好きな小学生の七太・息子の令哉それぞれが主人公となって語られていきます。
その合間に断章として、飼いネコの「福」の猫ならではの視点が入るのがとても面白い。
店番をする初さんのところには、おしゃべりを楽しむ元ホストの金髪の青年や、買い物ついでに福と遊べるのを楽しみにしている小学生の七太を初め、常連さんがほんの時々やってきます。
初さんのおばあちゃんならではの可愛さといいテンポの会話は読んでいてとても楽しい。
中でも、父を突然亡くした令哉と、両親が離婚して父がいなくなってしまった七太とが心を通わせながら流れる優しい空気感がなんとも素敵。
福と遊びながら2人でおやつを食べたり、ピクニックに行ったり。
七太君の好きな子の話をしてみたり。
何というか、子供ながらに親の気持ちに思いを馳せてみたり、友達の気持ちを考えてみたり、誰にでもあるそんな何気ない日常の健気さにそっと触れることで、読んでいる私の心も浄化されるのです。
同じ年代の子を持つ同じ世代の親として、色んな心の琴線にふれる物語でした。
あ~ 美味しい豆腐が食べたい!
今までスーパーでも安い豆腐を選んでたけど(いや、これからも安いのを買うけど。。)お豆腐屋さんを見つけたら、多分私は高くても買ってみるでしょう(笑)