ひょんなことから『ぞうさん』と呼ばれる店主の70代の女性が営む定食屋でアルバイトをすることになった30代の沙也加。立場も年齢も全く違う不器用な二人の女性が少しずつ心を通わせていく温かいストーリー。
いつもながら原田ひ香さんの作品には美味しいものが沢山出てきます!
誰かのために食事を作る。
食事の楽しみ方は人それぞれ。
読み終えたら、肩の力がふっと抜けて明るい気持ちになれる本のご紹介です。
定食屋「雑」 原田 ひ香
真面目でしっかり者の沙也加は、丁寧な暮らしで生活を彩り、健康的な手料理で夫を支えていた。しかしある日突然、夫から離婚を切り出される。理由を隠す夫の浮気を疑い、頻繁に夫が立ち寄る定食屋「雑」を偵察することに。大雑把で濃い味つけの料理を出すその店には、愛想のない接客で一人店を切り盛りする老いた女店主の“ぞうさん”がいた。夫の真意を探るため、沙也加はこの定食屋「雑」でアルバイトすることになり――。
個性も年齢も立場も違う女たちが、それぞれの明日を切りひらく勇気に胸を打たれる。
ベストセラー作家が贈る心温まる定食屋物語。
引用 双葉社より
レビュー
育った環境の違う二人が結婚して、それぞれの家の当たり前をすり合わせ、歩み寄っていくことの難しさを思わずにはいられません。
沙也加の実家では、母親が健康に気を使った丁寧な料理を作り、父親は決してお酒を飲みながら食事をしない家でした。
そんな家に育った沙也加は、せっかく健康を考えて丁寧に作った食事をお酒と一緒にされることにどうしても抵抗を覚え、夫にも父と同じように求めてしまうのです。
一方夫は食事をしながらお酒を楽しみたいのに、だんだんと食事の時間が窮屈となっていき・・・。
毎日の食事でのすれ違いは、なかなかに難儀なものですね。。。
そんな夫が足しげく通う定食屋「雑」。
夫の浮気を疑い偵察目的で訪れた『雑』で働きはじめた沙也加は、料理の味の濃さに驚き、お客さんが食事と一緒に自由にお酒を楽しむ姿を目にする中で、徐々に自分の中の当たり前と真面目に向き合っていく姿が丁寧に描かれています。
「ぞうさん」が高齢になりながらも試行錯誤でお店を守る姿を受け、沙也加の心も次第に柔らかく明るい方へと梶を切っていく姿が清々しい。
小説の中でも、新型コロナの危機は無情にもやってきます。
変わらず守れるものがあれば、変わらざるおえないものもある。
人生に色々な節目を迎えた二人の女性の成長を追うことで、読んで美味しい、読んでうれしい物語となっています。
是非手に取ってみてくださいね☆
定食屋「雑」には、【ほろよい読書】で収録された短編を第一話として、その続きの物語が描かれています。
その後の沙也加の人生がどうなっていったのかが気になっていた人にも是非読んでいただきたい。
ほろよい読書は、「お酒と女性」をテーマに5人の作家達が描いた短編ストーリーです。
